令和8年熊本地震 国税の取扱いまとめ

国税庁 令和8年8月12日公表分と、その後の追加・更新分をもとに整理(最終確認日:令和8年10月16日)
どなたが期限延長の対象になるのかを、税目ごとに判定するための要点整理

まず押さえる4点

1
指定された4市町に納税地がある方は、
令和8年7月28日以降に到来する申告・納付等の期限が、
全税目について、申請なしで自動的に延長されます(地域指定)。
2
延長後の期日はまだ決まっていません(令和8年10月16日時点)。
今後あらためて国税庁告示で示されます。
3
地域外でも、被災により期限までに申告・納付ができない場合は、
申請により延長が認められます(個別指定)。
この申請は、期限が過ぎた後でも行えます。
4
相続税・贈与税は、4市町の外でも延長される場合があります。
熊本県内の土地等を相続・贈与で取得した方は、
措置法69条の8により、申告・納付期限が令和9年5月28日まで延びます。
要件は「相続税・贈与税は4市町の外でも延長される場合がある」の項で確認してください。
地域指定の対象
熊本県 八代市/宇土市/宇城市/八代郡氷川町
令和8年8月12日 官報掲載(国税庁告示第21号)/国税通則法11条・同施行令3条1項

地域指定の対象になるかは「納税地」で決まる

地域指定は、住んでいる場所や被災の有無ではなく、
その国税の納税地が4市町にあるかどうかで判定します。
税目によって納税地の決まり方が違うため、下表で確認してください。

税目 納税地(=判定の基準になる場所)
個人の所得税
個人の消費税
ご本人の住所地
法人税
法人の消費税
本店または主たる事務所の所在地
連絡先の事務所だけが地域内にある場合は、対象外です。
相続税 被相続人の最後の住所地(死亡時の住所地)
相続人の住所地ではありません。
準確定申告
(被相続人の所得税)
被相続人の死亡当時の納税地
贈与税 財産をもらった方(受贈者)の住所地
根拠:相続税は、相続税法62条1項にかかわらず、
当分の間、被相続人の死亡の時における住所地が納税地とされています(相続税法 附則3項)。
国税庁タックスアンサーNo.4205にも、
「相続人の住所地を所轄する税務署ではありません」と明記されています。

相続のケース別 判定早見

自動延長される
被相続人が4市町にお住まいだった
相続人が全国どこにお住まいでも、
その相続税は自動延長の対象です。
被相続人の準確定申告も同じ扱いです。
地域指定では延長されない
相続人が4市町にお住まい/被相続人は地域外
相続税の納税地は被相続人の住所地のため、
地域指定(通則法11条)の対象になりません。
ただし、熊本県内の土地等を取得している場合は、
措置法69条の8により令和9年5月28日まで延長されます(次項)。
それ以外で被災していれば、申請による個別延長で対応します。
なお、その相続人ご自身の所得税・消費税は、
住所地が地域内であれば自動延長の対象です。
要注意
贈与税は基準が逆
贈与税は、財産をもらった方の住所地が納税地です。
贈与者が4市町にお住まいでも、
受贈者が地域外であれば地域指定の対象になりません。
(熊本県内の土地等の贈与は、措置法69条の8で延長される場合があります。)

相続税・贈与税は4市町の外でも延長される場合がある

令和8年8月7日に特定非常災害へ指定されたことで、
熊本県内の土地等などを取得した方は、納税地にかかわらず期限が延びます(租税特別措置法69条の6〜69条の8)。
国税庁が令和8年8月24日に掲載した案内(PDF)の内容です。

項目 内容
対象となる取得時期 相続税:令和7年9月28日〜令和8年7月27日に相続等で取得
贈与税:令和8年1月1日〜令和8年7月27日に贈与で取得
適用の前提 災害発生日(令和8年7月28日)に所有していた特定土地等または特定株式等について、
評価の特例(措置法69条の6・69条の7)を適用できること
特定地域は熊本県全域(令和8年8月10日現在)。4市町より広い範囲です。
申告・納付期限 納税地が4市町内:国税庁告示で定める日と令和9年5月28日のいずれか遅い日
納税地が4市町の外:令和9年5月28日
相続人が複数いるとき 相続人等のうち1人でも69条の6の特例を適用できる方がいれば、
相続人等の全員の期限が延長されます。
延長後も間に合わないとき 被災により延長後の期限までに申告・納付できない場合は、所轄税務署長への申請で個別に延長を受けられます。
特定土地等:特定地域内にある土地等。
特定株式等:上場株式など一定のものを除く株式等のうち、取得の時に特定地域内にあった動産等(不動産を含む)が、
保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式等。

延長される期限の範囲

被災された場合のその他の措置

振替納税をご利用の方
指定地域内では、令和8年7月28日以降に納期限が到来する
予定納税2期分・消費税の中間申告分等の振替日が延期されます。
7月31日に引き落とし済みの予定納税1期分も、
納税の猶予の申請等により還付できる場合があります。
住宅や家財に損害を受けた方
確定申告で、雑損控除と災害減免法のうち
有利な方を選べます。
源泉所得税の徴収猶予・還付を受けられる場合もあります。
本地震は令和8年8月7日に特定非常災害に指定されたため、
雑損失の繰越期間は5年になります。
納税が困難な方
財産に相当な損失を受けた場合や、
一時に納付できない場合は、申請により納税の猶予を受けられます。
事業の継続・生活の維持が困難になるおそれがある場合も、
猶予の対象になり得ます。
相続税・贈与税の災害減免
取得した財産が被災し、次のいずれかに当たれば、
災害減免法により減免されます(令和8年9月17日更新の案内)。
①課税価格の基礎となる財産全体(相続税は債務控除後)のうち、被害部分が10分の1以上
②動産等(土地を除く。家屋・家財を含む)のうち、被害部分が10分の1以上
申告期限前の被災は課税価格から被害額を控除、
申告期限後の被災は税額が免除されます
(後者は災害のやんだ日から2か月以内に申請)。
被害割合表などの「別表(令和8年中に被害があった場合)」は、
国税庁ページ上でまだ確認できません(令和8年10月16日時点)。
相続時精算課税の土地・建物の特例
精算課税で贈与を受けた土地・建物が被災し、被災割合が10分の1以上のとき、
特定贈与者の相続税で、被災価額を課税価格から控除できます(税務署長の承認が必要)。
災害発生日から3年を経過する日までに承認申請書を提出します。
その贈与税について災害減免を受ける場合は、この特例は使えません。
相続案件の評価の特例(措置法69条の6・69条の7)、申告期限の延長、災害減免の詳細は、
「相続税:申告期限と財産評価」タブにまとめています。

その他の税目の主な措置

印紙税の非課税
被災者が、代替建物の取得・新築や損壊建物の修繕のために作る
「不動産の譲渡に関する契約書」「建設工事の請負に関する契約書」は非課税です。
災害発生日から5年以内に作成するものが対象で、り災証明書の添付が必要です。
災害特別貸付けの「消費貸借に関する契約書」も非課税です。
自動車重量税の還付
被災して廃車(永久抹消登録等)した自動車は、
車検の残存期間に応じて自動車重量税が還付されます。
被災日から5年以内に、運輸支局等へ還付申請書を提出します。
酒類業者の方
免許等の手続に弾力的な措置があります。
販売のために所持していた酒類が被災した場合は、酒税相当額の救済措置があります。
相談窓口は熊本西税務署の酒類指導官です(096-355-1181、音声案内で「2」)。

ケース:令和7年12月に相続が開始し、熊本県内に土地・家屋がある場合

地震発生前に相続が開始していた場合の取扱いを、一般的なケースとして整理しています。
令和8年10月16日時点の公表情報に基づきます。

1
令和7年12月に相続が開始したケースでは、
相続財産に熊本県内の土地があれば、
相続税の申告・納付期限は少なくとも令和9年5月28日まで自動的に延長されます(租税特別措置法69条の8)。
2
被相続人の死亡時の住所地(=相続税の納税地)が指定4市町にある場合は、
国税通則法11条の地域指定による延長も重なり、
「別途国税庁告示で定める期日」と令和9年5月28日のいずれか遅い日まで延長されます。
3
熊本県内の土地は「特定土地等」として、
相続開始時の時価に代えて地震発生直後の価額(令和8年分路線価等×調整率)で評価することを選択できます(措置法69条の6)。
家屋の被害は、災害減免法6条による課税価格からの被害額控除で反映します。

1 前提となる指定の状況(時系列)

年月日できごと・指定根拠
令和8年7月28日令和8年熊本地震が発生(=特定非常災害発生日)—
令和8年8月7日激甚災害に指定令和8年政令第259号
令和8年8月7日特定非常災害に指定(相続の承認・放棄の熟慮期間の伸長〔令和9年3月31日まで〕等の措置を適用)令和8年政令第260号
令和8年8月12日国税通則法11条の地域指定を官報に掲載。指定地域に納税地のある方の、令和8年7月28日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を自動延長(申請不要・全税目)国税庁告示第21号
令和8年8月24日相続税・贈与税の申告・納付等の期限の延長(措置法69条の8)と、財産評価の概要を国税庁が掲載下記リンク集
令和8年9月17日相続税・贈与税の災害減免措置、相続時精算課税の土地・建物の特例の案内を更新下記リンク集
措置法の評価特例で用いる「特定地域」(被災者生活再建支援法3条1項の適用地域)は、
地域指定の4市町より広く、令和8年8月10日現在で熊本県内全域とされています。
期限延長の「指定地域」(4市町)と、評価特例の「特定地域」(県内全域)は範囲が異なる点に注意してください。

2 申告期限の延長

原則

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。
令和7年12月に相続が開始したケースでは、原則の期限は令和8年10月頃に到来し、
地震の発生日(令和8年7月28日)より後になります。

延長の仕組み(2本立て)

ケースA
被相続人の死亡時の住所地が指定4市町にある場合
通則法11条の自動延長と措置法69条の8が重なり、
「別途告示で定める期日」と令和9年5月28日のいずれか遅い日まで延長されます。
納付期限も同様に延長されます。
ケースB
死亡時の住所地が4市町の外(熊本市・県外など)の場合
県内の土地(特定土地等)があれば、
措置法69条の8により令和9年5月28日まで延長されます。
実際に被災して申告が困難な場合は、所轄税務署長への申請による個別指定(通則法11条・同施行令3条3項)も使えます。
この申請は、期限経過後でも認められます。
最初に確認すること
相続税の納税地は「被相続人の死亡時の住所地」であり、相続人の住所地ではありません。
どちらの延長が働くかは被相続人の住所地で決まるため、まずここを確認します。
なお延長は納付期限にも及び、延納・物納の申請期限も延長後の期限によることになります。

3 土地の評価 — 特定土地等の特例(措置法69条の6)

次の要件を満たす土地等は、課税価格に算入する価額を、
相続開始時の時価に代えて「特定非常災害の発生直後の価額」とすることができます(選択制)。

要件本ケース(令和7年12月相続開始・県内の土地)
特定非常災害発生日前に相続等により取得令和7年12月の相続取得で該当(対象となる取得時期は令和7年9月28日〜令和8年7月27日)
申告期限が発生日以後に到来原則期限が令和8年10月頃のため該当
発生日(令和8年7月28日)に所有申告前に売却していないことを確認
特定地域内の土地等特定地域は熊本県内全域(令和8年8月10日現在)のため、県内の土地は該当

4 家屋の評価と災害減免法

家屋は特定土地等の特例の対象外のため、通常どおり固定資産税評価額に基づいて評価します(財産評価基本通達89・倍率1.0)。
令和7年中に取得した家屋は令和7年度、令和8年中に取得した家屋は令和8年度の固定資産税評価額を用います。
地震による家屋の被害は、災害減免法6条により、
課税価格に算入する価額から「被害を受けた部分の価額」(保険金・損害賠償金などで補填される部分を除く)を控除する方法で反映します。

区分被災の時期内容・手続
災害減免法6条 申告期限前に被災
(本ケースはこちら)
課税価格から被害額を控除。申告書に被害の状況・被害額を記載し、計算明細書を添付
災害減免法4条 申告期限後に被災 被害があった日以後に納付すべき税額のうち被害割合に対応する部分を免除。災害のやんだ日から2か月以内に免除承認申請書を提出

適用要件(いずれかを満たせばよい)

「動産等」は、動産(金銭・有価証券を除く)、不動産(土地・土地の上に存する権利を除く)、立木を指します。
家屋・家財は含まれ、土地は含まれないため、家屋の被害が大きいケースでは(2)の基準の方が満たしやすくなります。
なお土地の被害部分も、(1)の判定と控除の対象には含まれます。
評価特例(調整率)と災害減免の併用
国税庁の文書回答事例(地割れ等が生じた特定土地等の評価)では、損失の種類で整理されています。
  • ●物理的な損失(地割れ・亀裂・陥没・隆起など、土地そのものの形状が変わったもの):災害減免法6条の対象
  • ●経済的な損失(地価の下落、街路の破損、ライフラインの停止など):調整率による評価で反映
  • ●要件を満たせば両方を適用でき、「路線価×調整率」で計算した価額から、災害減免法6条の「被害を受けた部分の価額」を控除します。
  • ●物理的な損失の「被害を受けた部分の価額」は、原状回復費用の見積額(保険金等で補填された額を除く)の80%相当額として差し支えないとされています。
個別の当てはめは、所轄税務署への確認をお勧めします。

5 実務の進め方(令和8年10月16日時点)

未確定・公表待ちの事項

期限は少なくとも令和9年5月28日まであるため、
これらの公表を待ってから申告作業を進めるのが現実的です。

先行して準備できること

小規模宅地等の特例など「申告期限」を基準とする要件(保有継続・事業継続など)は、延長後の期限で判定されることになります。
未分割で申告する場合も延長後の期限が基準です。
なお、相続の承認・放棄の熟慮期間の伸長(令和9年3月31日まで)は、地震発生前に熟慮期間が満了していた相続には適用されません。

公式資料へのリンク一覧

対象となる方へお伝えするにあたって

4市町に納税地がある場合、期限は申請なしで延長されています。
特に相続税では、被相続人の最後の住所地が判定の基準になるため、
ご自身が対象かどうか分かりにくい点に注意が必要です。
また、被相続人が4市町以外にお住まいでも、熊本県内に土地等がある場合は、
申告・納付期限が令和9年5月28日まで延びる場合があります。

一方で、現地は今も復旧の途上にあります。
まずは状況を伺い、
「期限は延びていますのでご安心ください」とお伝えすることが第一で、
書類や資料の準備を急がせる連絡と受け取られることのないよう、
十分な配慮が求められます。